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研究プロジェクト

 

パターン認識手法HLACによる病理画像のがん診断支援技術

概要

近年、がん患者数が増大しており、2005年から2015年までに罹患数が68%増(89万人)、生存数が91%増(308万人)と予測されています。その一方で、がんの確定検査を担う病理診断医の数は人口10万人あたり約1人(米国では7.9人)と不足しており、さらに減少する見込みであることから、診断の高度化や診療業務負担の増大に伴って、見落としや誤診の危険性が高まることが懸念されています。そこで我々は、産総研独自のパターン認識手法HLAC(高次局所自己相関特徴)により、医療従事者の負担軽減と、診断の質や効率の向上を同時に実現するための、診断支援システム技術を研究開発しています。

THE CHALLENGE

・認識率の高い高信頼ながん認識手法の構築
・病理医の負担を軽減する病理画像診断支援システムの構築グリッドにおけるセキュリティ(安全性)の標準技術

OUR APPROACH

1.HLACによる高精度ながん認識
HLAC(高次局所自己相関特徴法)は産総研によって発明された適応学習型パターン認識手法であり、監視カメラ映像からの異常検出など、様々な応用展開がなされています。
我々のがん認識システムでは、まず正常な組織の画像データを学習します。具体的には、あらかじめ用意した多数の正常な組織の画像に対して、HLACの特徴ベクトルを算出します。これが対象画像の性質を表現する特徴量となります。これらに主成分分析などの統計処理を施すと「正常であること」の性質を得ることができます。この正常である特徴量と、検査サンプル画像からも同様に抽出したHLAC特徴ベクトルとの逸脱量を定量化することで、高精度にがん部位を検出できます。胃がん組織の識別予備実験を行ったところ、画像データ74件に対し、がんの見落としはゼロ、正常な組織をがん組織と識別した過検出を4%に抑えることに成功しました。
従来の方法は画像から「がんの特徴を持つ細胞や組織」を探し出そうとしてきました。すなわち、画像中の細かな対象物を様々な観点から形態的特徴を一つ一つ計測し、あらかじめ定めておいた異常条件(がん細胞や組織の持つ特徴)と照らし合わせて判定していました。しかし細胞や組織には様々なバリエーションがあり、異常の条件を事前に全て定義しておくことは原理的に不可能です。病理医は多くの正常組織を見ているために、「いつもとなにか違う」ということを直感的に感じ、がんを発見することができると言われます。我々のHLACによるアプローチは、この診断過程ととてもよく似たプロセスであると言えます。

2高速画像処理ミドルウェア
病理医の負担にならない病理画像診断支援システムの構築のためには、高精度な認識システムだけでなく、高速な画像処理技術が必要となります。特に病理検査では、病理標本のスライドガラス全体をデジタル化するバーチャルスライドが利用されるようになっていますが、このデジタル化された病理画像は1枚あたり10万×10万画素、非圧縮で約30ギガバイト(圧縮時〜1ギガバイト)におよびます。我々はこの巨大な画像を高速に処理するためのミドルウェアの開発を行っています。
具体的には圧縮されたデータの注目する部分の画像を高速にデコードし、高速に画像を展開し、がん認識システムに投入するミドルウェアの開発や、HLAC特徴ベクトルを高速に演算するためのライブラリ等の整備を行っています。また、病理画像および処理結果を高速に病理医に提示し、直観的な操作が可能なツールの開発も行っており、インタラクティブで使いやすい病理画像診断支援システムの構築を目指しています。